すべて、後講釈である。フイッチ、S&Pに続き、ムーディーズがアメリカの信用格付けをAaa→Aa1に引き下げた。政府債務の増加が背景にある。このネガティブな話は2年以上前に言われてきた。スコット・ベッセント財務長官によると、「遅いよ」ということらしい。まあ、ドル債にはあまり影響はないだろう。
トランプ関税の目的は「アメリカにおいて、商ビジネスをやりたければアメリカで生産せよ」との政策だ。世界のGDPが93兆ドルなのに対し、アメリカの個人消費は16兆ドル(2320兆円)と巨額である。これは無視できない。それに、アメリカ企業(海外企業の現地工場も含む)は関税に守られ、製品を高く売れる。
トヨタ自動車(7203)は2026年3月について、その前提を為替が1ドル=145円、対米輸出台数が50万台とし、4~5月の2ヶ月だけで「1800億円の減益要因」(単純計算だと、年間では1兆800億円の損失)と公表している。極端な話、将来的にはアメリカ工場での増産(50万台?)を考えるのではないか。
アメリカ向け輸出比率の高い企業は多くが現地生産を計画するだろう。ドナルド・トランプ大統領の狙いはそこにある。雇用は維持される。いや、増える。もちろん、アメリカの生産性は低下し、国際競争力は失われる。しかし、アメリカ国内で生産→販売が完結するのであればこれはこれで「良し」とする。
物色面ではトランプ関税の影響をものともせず、好業績の銘柄にマトを絞りたい。具体的にはヘルスケア領域中心にAIクラウド、コンサルが伸びているFinatextホールディングス(4419)、会計パッケージシステムのプロシップ(3763)、温度制御のチノー(6850)など。DX関連は強い。旺盛な設備投資が支えである。
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