独裁者の末路はあわれである。シリアのアサド政権があっけなく崩壊、アサド大統領はロシアに亡命した。これはアサド政権をロシアが支え切れなかったことを意味する。韓国のユン・ソンニョル大統領も大変な事態になっている。「出国禁止」らしい。朝鮮半島情勢は不穏な動きとなろう。
反面、アメリカ大統領は強い。絶対的な権限を有する。各国の国家元首以上に、鉄壁に守られている。トランプ次期大統領は「減税と関税」を武器に、「アメリカを再び偉大な強国にする」と宣言している。法人税率は第1次政権下の2017年に35%→21%に引き下げたが、今回は製造業者については15%にする、という。
関税については1930年の世界不況を引き起こした関税法(スムート・ホーリー法)をはじめ、1962年の米国通商拡大法232条、1974年の通商法301条、1977年の国際緊急経済権限法(IEEPA)が使える。けっしてブラフ(脅し)ではない。すなわち、関税引き上げは大統領令によって可能である。
それが世界貿易にどんなダメージを与えるか、それは別問題だろう。スムート・ホーリー法は1929年の大恐慌をきっかけに、フーバー大統領が国内企業を守るために、広範囲の輸入品に高関税を課した。結果的にこれが「恐慌の輸出」につながり、第2次世界対戦の引き金になった、といわれている。
いや~、厳しい時代である。この局面は、ここは引き続いて個別物色の投資戦術が有効だろう。強い銘柄としては好業績、材料含みのラウンドワン(4680)、IMV(7760)、サンマルクホールディングス(3395)、インソース(6200)、リクルートホールディングス(6098)、NTTデータグループ(9613)などに妙味があると判断する。
10月29日(火)から『日刊ゲンダイ』(夕刊紙)に連載が始まりました。
コラム 経済評論家 杉村富生 「新NISAで買っていい?企業診断」の掲載は毎週火曜日になります。https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/364718