従来、配当(経営目標)の目安として、配当性向(最終純益の何パートセントを配当に回すか)が使われてきたが、最近は株主資本配当率(DOE)と併用する企業が増えている。改めて述べるまでもない。最終純益は変動する。これだと、減益→減配、赤字→無配の可能性が高まる。
DOEはこれを避けようというものだ。配当性向は30~40%が普通となっている。これに対し、DOEは3~4%が主流である。企業業績(最終純益)は変動するものの、株主資本は赤字決算にならない限り、毀損しない。この結果、安定配当、増配が可能になる。
ちなみに、国内企業の利益余剰金(金融・保険を除く)は2024年3月末時点では前年比8.3%増の600兆9589億円となっている。貯め込みすぎだ。永田町ではこれに「課税しよう」との声もある。
利益余剰金は12年連続の増加(過去最高の更新)だ。ちなみに、ROEとは株主資本利益率のこと。日本企業は内部留保を積み上げすぎている。この結果、ROEは上昇せず、PERが海外市場比低位に放置されている。PBRを上昇させるには増配、自社株買い、M&A、設備投資など内部留保の有効活用が不可欠だろう。
その意味において、DOEの定着は大きな流れの変化といえる。ちなみに、DOEを採用している企業にはサンワテクノス(8137)、東鉄工業(1835)、日本ゼオン(4205)、青山商事(8219)、鈴木(6785)、コンドーテック(7438)、MTG(7806)、デジタルホールディングス(2389)などがある。
サンワテクノスの2025年3月期は減益予想だが、増配(前期は85円、今期は120円)に進む。まさに、DOEの効果である。もちろん、株主優遇姿勢の強化とともに、先行きに対する自信の現れ(製造業は省人化、省力化を強力に推進)と思う。こうした動きが株価を下支えする。