ベッセント財務長官が信奉する「再帰性理論」って何?(4)

杉村富生 兜町ワールド

なにしろ、ヘッジファンドは売って儲け、買って儲ける連中だ。安値ゾーンではアクティビストが介入する。繰り返すが、ダルトン・インベストメンツ、エフィッシモ・キャピタル・マネージメント、オアシス・マネジメントなどアクティビスト系ファンドの運用資金は激増している。年率7080%のパフォーマンスを確保するファンドもある。

まあ、日本株がそれだけ割安ということだろう。PBR0.16倍のウッドワン(7898)の配当は24円、1株純資産は4846円ある。アクティビストにも無視されている。しかし、会社側は株価に強い関心を持ち、「何とかしたい」と考えているはずだ。最近、そんな動きがみられている。

ツバキ・ナカシマ(6464)のPBRは0.27倍にすぎない。やはり、「何とかしたい」と思っていることだろう。アクティビストだけではない。202412月期は無配としたが、膿はほとんど出したのではないか。こんな状況では同業に狙われる。なにしろ、時価総額は187億円にすぎない。TOBのターゲットになろう。

日本製鉄(5401)のPBRは0.6倍、1株純資産は5170円である。配当利回りは5%近い。こんなところは買いではないか。仮に、PBR1倍になると、5170円だ。PBR1倍水準は経営目標だろう。USスチールの買収騒動が重荷になっているものの、業界トップ企業がPBR1倍割れでは恥ずかしくないだろうか。

いずれにせよ、スコット・ベッセント財務長官はヘッジファンド業界に長く身を置いてきた人物だ。ジョージ・ソロス氏の「再帰性理論」はもとより、その体質が体に染み込んでいるだろう。だからこそ、マーケットを取り巻く環境は大きく変わる可能性がある、と主張している。

10月29日(火)から『日刊ゲンダイ』(夕刊紙)に連載が始まりました。

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