データセンターの普及にはパワー半導体が不可欠?(1)

杉村富生 兜町ワールド

AI(人工知能)の普及につれて、データセンターの重要性が一段と高まっている。10月に、エヌビディアのジェンスン・フアンCEOが来日し、日立製作所(6501)と提携したのはデータセンター、および発電に関する分野だった。日立製作所の技術力を評価したものだ。すなわち、電力需要は急増する。

それと同時に、省エネ(電力制御)のパワー半導体がにわかに脚光を浴びている。アメリカ市場ではナビタス・セミコンダクター(NVTS)、パワー・インテグレーション(POWI)などパワー半導体の株価が好人気だ。パワー半導体といえばローム(6963)、富士電機(6504)、三菱電機(6503)の出番ではないか。

まあ、それはそうだが、データセンター用に注目されているのはGaN(窒化ガリウム)パワー半導体だ。日本企業が強いのはSiC(シリコンカーバイド)半導体である。SiC半導体は耐熱、振動などに強い。主に、EV(電気自動車)に使われている。GaNは熱、振動に弱いものの、データセンターはEVと違って、環境が良好である。

すなわち、データセンターは空調が効いているし、自動車のように振動はない。日本企業はいまこそ、GaN(窒化ガリウム)パワー半導体の増産を進めるべきだ。エヌビディア(NVDA)はデータセンターに800 VDC(直流)アーキテクチャ(システムの基本的な設計思想)を採用している。

日本企業は資金力が乏しいことがあって、「一点突破」を試みるが、経営的にはトヨタ自動車(7203)のように、二兎(EV、ハイブリッド車、燃料電池車のほか、従来のガソリン車に注力)を追った方が良い、と思う。YKKは高級品と中・低級品をともに量産し、「二兎を追わねば一兎も得ず」を経営方針にしている。

2024年1029日(火)から『日刊ゲンダイ』(夕刊紙)に連載が始まりました。

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