8月15日付けのブログと一部重複するが、トーメンの話の結果は?豊田通商(8015)が救済合併に踏み切った。合併比率に不満はあったと思うが、トーメンの「株価がゼロ」(倒産すれば価値は1円以下)にはならなかったのだ。当時、多くの投資家がなぜだッと疑問に思った、と思う。
実は、トヨタ自動車(7203)は意外に「義理人情」に厚い会社である。トヨタグループの創業者の豊田佐吉は画期的な自動繊維機械を開発したものの、まったく売れず、会社は存亡の危機に陥っていた。世界的な発明なのに、「なぜ売れないのか」。無理もない。販売ルートがなかった。技術者が陥るワナだろう。
そこに、手を差し伸べたのは三井物産(8031)の綿花部長(綿花を輸入し、全国の織物業者に販売)だった児玉一造だ。これは「確かに、日本の繊維業界に役立つ機械だ。私が売りましょう」と。なお、トーメンデバイス(2737)は今も健在だし、好業績企業として知られている。豊田通商はトヨタグループの海外戦略の中核企業である。
彼は三井物産を退職、「東洋綿花」(のちのトーメン)を設立した。この機械は売れた。豊田佐吉は飛躍のきっかけをつかんだ。数年後、豊田佐吉は児玉一造に言った。「あんた、弟がいたね。オレにくれないか」。犬、猫じゃあるまいし、「くれって」と言われても…。「いや、娘がいる。彼女と結婚して欲しい」と。そして、豊田利三郎となる。
婿養子だ。そして、数年後、豊田佐吉は自動車業界への進出を決断する。初代社長は豊田利三郎である。トヨタグループがトーメンにある種の思い入れがあったのはこんな経緯による。まあ、“雑学”の類(たぐい)であり、あまり役には立たないと考えられるが…。とはいえ、株式投資が楽しくなるのは確かだろう。
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